ハバロフスク〜ビロビジャン 予定は何度でも修正する

昨夜、私たちは初回のregistrationを済ませていないことを思い出した。今朝になって、フロントのガーリャに尋ねると、「今日は日曜日なので明日申請して明後日に受け取ることができる」と、とても申し訳なさそうに答えた。私たちは「We thinking...」と言ってその場を去り、12時のチェックアウトまでの間に、どうするかを考えた。このまま火曜日まで7starsHotelに連泊するか、ハバロフスク中心地のホテルへ移動するか、先の町へ進むか。

レジストレーションは不要との意見もあるけれど、私は念のために初回だけ取っておきたい。確か、初回レジストレーションの期限は、現在7日以内。明日の月曜日で7日が過ぎることになる。

ハバロフスクを出てしまうと、レジストレーションができるようなホテルのある町があるのだろうか? MacBookでGoogleMapとBooking.com を使って、きちんとしたホテルのある町と、2泊分の宿代を探す。ハバロフスクから200㎞ほど離れた町・ビロビジャンにある『HOTEL VOSTOK』を、Booking.comではじめての予約。手続きは超カンタンでした。

200㎞なら余裕で走れる。時間もお金も使うけれど、後々面倒に巻き込まれないために、今きちんと手続きをしておこう。そう決めた。数日泊まっただけで、すっかり慣れ親しんだセブンスター。しかし、このまま此処に留まるわけにはいかない気がする。誰かに強制されているわけでもなく、ただ自分が同じ場所にとどまっていることが嫌なのだ。前に進むか、戻るか。それしか考えられなかった。

チェックアウトの時。フロントのガーリャが悲しそうに笑顔を見せるので、泣きそう。でも、電話番号とメールアドレスをもらい、抱擁してGood Luck。旅は別れの連続ですね。



走り出したのは正午頃。大雨。日本の梅雨よりもたくさん、毎日毎日雨ばかりだ。この雨の中を他のライダー達がどこかの空の下で走っているのかと思うと励まされる。気温は13〜14℃。寒い。それほど長い距離ではないので我慢できるかと思ったが、タンデムシートにまたがった私は寒さで足が震える。時速は60〜70㎞。雨のため視界が悪く、スピードが出せない。

ハバロフスクを出て50㎞ほど過ぎ、私は「次のカフェに入って」とアキオに告げた。それから数キロ走るとカフェが見えた。なのにアキオは「もうちょっと待って」と言って立ち寄らなかった。そこからさらに60㎞進んでも、次のカフェは無かった。私は寒さの限界で腹が立ち「バカヤロー」と大声でアキオに向かって叫んでやりたかった。アキオはやっと見つけたガソリンスタンドにバイクを止め、「ここでダウン着たらいい」と言ったので私は呆れた。雨の中、ガスステーションの屋根の下にバイクを止めたのならまだしも、屋根のないところに止めて、どうやってずぶ濡れのカッパを脱ぎ、ダウンジャケットを着て、またカッパを着ろというのだろうか? 怒っても仕方ないので、「私はカフェに入りたい」と言って、先を急いでもらった。チタまでだって2000㎞以上ある国道を時速60㎞で走るなんて、私には考えられなかった。そして、車でぶっ飛ばせたらどんなに楽しいだろう。青空だったらどんなに美しい景色だろうと想像した。

やっと見つけたカフェで、とにかく熱いブラックコーヒーが飲みたい!と思っていたのに、20ルーブル払って出てきたのは、甘い粉末カフェオレをお湯で溶いた飲み物。不味くはないけれど、あぁ、本物の珈琲はいつになったら飲めるんだろう!!



カフェを出ても暫く雨は続いていたが、気がつくと小雨になり、そして止んだ。雨のおかげでシベリア鉄道の客車と暫し並んで走ったところを撮影できなかったのが残念。その後も雨は降ったり止んだりの繰り返し。晴れ間は一つも見えなかった。

幹線道路は、舗装された時に道路の名前もM60ではなくなったのかもしれない。標識はすべて新しくなっている。新しく、そして正確だ。

のどかな雰囲気のビロビジャンの町。町へ向かって走っているだけで、なんとなく心が和みます。

町に入る前に、ガスステーションで給油していると、アキオに話しかけてきた一組のカップル。「寒いでしょ?車の中で温まっていかない?」と誘ってくれた。けれど、全身濡れているカッパを着て、小綺麗な車の中へ乗り込むなんて、私たちにはできなかった。さようなら。ありがとう。

そこで私たちは、ボックスのステーが崩壊寸前であることに気づく。よくこの状態で、ボックスが吹っ飛んでいかなかったものだと感心する。とりあえず応急処置。これを治さない限り、ビロビジャンは出発できないだろう。


私たちは、ハバロフスクより先は、幹線道路沿いのカフェに併設されている安宿で寝泊まりする予定だった。しかし、二人の親切な人からの忠告と、実際に起こった小さな出来事を踏まえて、これから先に起こる可能性のある大惨事を最大限に防ぐため、旅のプランを変更した。冒険よりも安全重視。私は自分が女であることが腹立たしい。そして、女というだけで抱きたがる男を軽蔑する。私たちは、知性のある人間だ。野生から進化した生き物なのだ。だからこそ、アキオが酔った勢いで暴露した前回の旅の行為を私は許せるのだ。

それよりも心配なことは、「期待していた旅とは全く違っていて、アキオが落ち込んでしまっている」こと。予想通りだ。予想どうりだけれど、私はその事態に対して打つ手を考えていなかった。がっかりするアキオを見るのが嫌で、私は最初、この旅を断りたかった。



ボックスのステーが壊れた原因は、「ステー自体が弱いこと」「ボックス自体が重いこと」「荷物が多すぎること」などなど。

出発前にさんざん悩み、私たちはテントを持って行くことにした。しかし、今は「テントっていつ使うんだろう?」という気持ち。「テントは危険すぎる」と何度も言われた、その意味が今はわかる。

多すぎる荷物を半分に減らそうと思えば減らせる。でも、日本よりも物を大切にしている人たちがたくさんいるこの国で、不要なものを捨てて去るなんてできない。

アキオは今、ぐーぐー眠っている。このホテルは禁煙で、喫煙は玄関を出た外。ホテルの前は、広場のような、町の人々の通り道になっている。現在夜11時40分。一人でタバコを吸いに行って大丈夫かしらと悩み続けて3時間が経っている。



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