ロシアの黄色い花

2016年6月20日 ロシア シベリア地方

夏のロシアの幹線道路を走ったことがある人なら誰もが知ってる黄色い花。

知っていると言っても殆どの人は、ただ「黄色い花が咲いていた」ことを知っているだけで、それの花の名前を答えられる人は少ないはず。

あの花は、何という花でしょうか。

旅から二年、時々私は思い返しては、考えていました。


ところで、私がロシアで一番好きになった食べ物は「ウクロフ=ディル」です。

ボルシチやペリメニ、その他あらゆる料理に刻んで添えられるディルの葉っぱ。

その香りは独特ですが、日本のネギやシソより優しく、食べられないほど嫌いな人はいないんじゃないかと思います。

あまりにも気に入った私は、サンクトペテルブルグで親密になったヴァレラさんにお願いして、ウクロフの種を買ってもらったのでした。

日本にもディルの種は打っているだろうけれど、ロシアのウクロフを育ててみたかったのです。



2018年4月30日の様子

帰国してすぐの春は、アブラムシにやられて失敗に終わりました。

今年の春にリベンジして食べるために育てたのですが、葉の育成が寂しく、まだ食用には至っていません。

そんなヒョロッとした株から黄色い花が咲き始め、花が種になると株は枯れてしまうはずなので、花の茎を切り取って、廊下の窓に飾ってみたのです。

本当は部屋に飾りたかったけれど、猫用脱臭機が置いてあるから、廊下にしました。




ウクロフ(ディル)の黄色い花

廊下を通る時、黄色の花に鼻を近づけて、クンクンと匂いを嗅いでみると…あれれ! この匂いは、とても懐かしい香り。

ロシアの幹線道路を走っている時、何もないような景色の中、甘い花の香りが漂っていることがありました。

その香りが、このディルの花の香りだったんです!

懐かしくて涙が出てきます。

つらくてつらくてしんどくて素晴らしかった旅が懐かしい。

もちろん、ロシアのすべても。



(注意:もしかしたら本当はウクロフではない別の花かもしれません)



ロシアを代表する花は『ひまわり』または『カミツレ』なのだそうですが、いまいちピンとこない。

私にとってロシアの花は、断然ウクロフの黄色い花。

正しくは「укроп」。「ウクロープ」と日本語表記するみたいだけど、「プ」をはっきりと発音させないので、私にはウクロフと聞こえたし、それで通じてた。



夏のロシアの幹線道路を走っていると必ず目にする黄色い花。その香り。

我が家の廊下に水を差して佇んでいる1本の花茎。

廊下を通るたびに花を近づけてはクンクン。

今ある嫌なことも辛いことも、その束の間は忘れさせてくれる。

これこそが大切な思い出の宝物。



花の香りは、葉よりも甘くて深いです。

ロシアが懐かしくなったら、ぜひディルの花を育ててみて下さい。
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